季節のトラブル・養生(冬)
日本の冬
日本の冬は寒さが厳しく、乾燥しやすいのが特徴です。特に、寒さによって体のバランスが崩れやすくなる季節です。
このような寒い季節には、陽気(エネルギー)は内に集まります。寒さから身を守ることのほかに、もうひとつ重要な目的があります。それは生命力を内に集めて、春や夏に消耗したものを回復し、各機能を修復して、つぎの季節へ備えることです。
古代中国に起源を持つ哲理として五行説があります。その五行説でいうと、冬には腎が傷つきやすくなるといわれています。腎は水分調節、成長や発育に関わる働きがあり、骨や腰とも密接に関係しているとされています。この腎の働きが衰えると、トイレが近くなったり、腰やヒザなどの運動器トラブルが起こりやすくなったりします。
漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には、冬は草木が枯れ落ち、穀物は倉(蔵)の中にしまい込まれ、動物は冬籠りするように、すべてが閉塞して陽気(エネルギー)を外に出さない季節なので、冬の3ヵ月のことを閉蔵(へいぞう)と言って、その養生法が次のように述べられています。
「この季節には、早く眠り日の出に合わせてややゆっくりと起き、心静かに過ごし、寒冷を避け温かく保ち、また汗をかいて陽気を失われないようにする。これが冬の季節に調和した養生法であります。もし、養生法に逆らって、気が動転したり、寒冷にさらされたりすると、腎を傷害し、春になって手足が萎えて冷えるとされています。」
とにかく冬は、寒さから体の陽気を守ることが大切です。かといって逆に暖房などで部屋を暖かくし過ぎると、体表部を開き、かえって陽気の発散を強めてしまいます。部屋の温度は少し低めに設定して、皮膚の扉を閉じ、衣服の工夫で体から熱が逃げないようにするのがいいでしょう。
冬の一般的な養生
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1
温性食品を食べる
からだを温めてくれる温性の食品を積極的に摂りましょう。寒いところでとれるごぼうやニンジンなど根菜類は体を温めてくれますが、南国の果物や生野菜で食べるレタスやトマトは体を冷やします。
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2
調理(ゆでる、焼く、
煮るなど)によって
食性が変わるからだを冷やす食品でも、火を通すことでその作用は変わります。冬は生食を避け、ゆでたり、焼いたり、煮たりする工夫をしましょう。そういう点では、冬に鍋物という日本料理は合理的な食べ方といえます。
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3
決まった時間に三度の
食事で胃腸をいたわる食事時間がバラバラだと、胃腸トラブルのもとです。胃腸は栄養を吸収してエネルギーをつくってくれる第一段階。ダイエットのために食事を抜いたり、仕事が忙しくて食事時間が遅くなったりしないよう気をつけましょう。
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4
まとめて動くより
毎日こまめに動くたまの休日にまとめてスポーツをするよりも、平日の生活の中にからだを動かす習慣を取り入れることが大切です。まずは歩く機会を増やして、家事などでこまめに動く習慣をつけましょう。
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5
入浴はぬるめの長湯
または足湯からだを芯から温めるには、ちょっとぬるめ(38℃前後)のお湯に、ゆったりといつもより少し長くつかりましょう。お風呂が嫌いな方は、少し熱め(40℃くらい)で足湯(足だけつける)を。シャワーより効果が期待できます。
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6
冷えるところを
こまめにマッサージ手足が冷えやすい方は、その部分をもんだり、さすったり、押したり、たたいたりと簡単なマッサージをしましょう。温まるだけではなく、末梢の血行もよくなりリラックスできます。
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7
夜は早く寝て、
朝は遅くまで 床にある古典「黄帝内径」にあるように、「夜は暗くなったらすぐ休み、朝は太陽が昇って暖かくなってから起き出すのがよい」と冬季は唯一朝寝坊を奨励しています。万事に無理をしない、エネルギーを消耗しないことに重点を置いています。
冬に多いからだのトラブル
冬には寒さや冷えによる
トラブルに気を付けて
冬には冬特有のトラブルがあります。この季節は一年中で最も気温が低く、からだが冷えて新陳代謝が衰えます。まず、第一に考えられるトラブルはインフルエンザに代表されるカゼです。咳やカゼなど呼吸器のトラブルは、乾燥した秋から増えてきますが、乾燥に寒さが加わった冬にはピークに達します。また、冷えで血液の循環が悪くなり、心臓などの循環器や脳にトラブルが発生しやすくなります。この時期、4日以上寒波が続くと心臓病や脳卒中の発作を訴える人もでてきます。さらに、末梢の血行不良は、手足、腰、肩、ヒザなど全身各所に痛みやはれなどのトラブルを招き、日常生活の妨げとなってきます。