• 夏の一般的な養生
  • 夏に多い体のトラブル

日本の夏

アジアモンスーン地帯に属する日本は、一年中を通じて雨が多く湿度が高い国です。日本の夏は同じ緯度の諸外国と比べても大変蒸し暑く、過ごしにくいといわれています。高温多湿という日本の気候は、日本人の体質にも大きな影響を与えています。島国の日本人は湿邪に侵されやすい。言いかえると水分の排泄が悪く、体内に余分な水分をかかえ込んでしまうことです。漢方ではこのような水分過剰な状態を水毒証(すいどくしょう)といいます。

梅雨が明けると本格的な夏の到来です。夏は太陽の季節。一年中で最も体力を消耗する季節となります。



漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には、夏の3ヵ月のことを蕃秀(ばんしゅう)と言って、夏の養生法が次のように述べられています。

「夏は草木が成長し、万物が茂り花咲き乱れ、陽気が最高潮に達する季節です。夏には、少しは夜更かしをしてもよいが、朝は早く起き、夏の日の長さや暑さを嫌がらず、適度に運動して、精神的にも気分を発散させることが大切です。

もし養生法に逆らって、心の働きが損傷してしまうと、精神症状や不眠症状が現れてしまいます。また、秋にには、痰の少ない乾いた咳をするようになってしまいます。」

夏は汗を滝のようにかきますが、外の温度が高いのでいくら汗をかいても体温の放散は進まず、かえって体力が消耗します。逆に冷房の効いた部屋で過ごし、汗をかかない生活をすることもよくありません。摂取した水分が体の中に溜まって、何となく体が腫れぼったく重い。体を動かすのが億劫になります。また、夏は冷たい飲み物を欲しやすくなる季節です。過剰に冷たい飲み物を摂取することは胃腸に負担をかけ、消化や栄養吸収の低下をまねき、胃腸虚弱な状態を作ってしまいます。漢方ではこのような状態を脾虚証(ひきょしょう)と言います。

このように、水毒と脾虚というのが日本人の体質の特徴です。夏(梅雨も含め)の食養生もこの体質的弱点を補い、是正するのが重要となります。夏は特に胃腸が弱るので少しでも消化のよい物を食べて、胃腸に余分な負担をかけないことです。次に冷たい物は胃腸の働きを弱めるので、なるべく温かい食物を摂るようにしましょう。


夏の一般的な養生

  • 1

    気を使うより
    体を使いましょう

    取り越し苦労や過ぎたことをクヨクヨ考えるのも体にはよくありません。運動をしてストレスを汗とともに流しましょう。早足の散歩、スイミングなど。

  • 2

    冷房は
    ほどほどに

    クーラーの調節には気を付けて、うまく活用しましょう。(環境省が推奨する、クールビズでの室内温度の目安は28度とされています)

  • 3

    ビールや清涼飲料など
    の飲み過ぎに注意

    お酒の量は個人によって異なりますが、翌日に残らない程度に、暑いからと言って水分の摂り過ぎには気をつけましょう。

  • 4

    楽しく食べる

    家族そろって楽しい会話の中で食べれば、食欲も進み、消化にもよいものです。食卓では明るい話題で心の栄養を摂りましょう。クラシック音楽などをかけるのもいいでしょう。

  • 5

    自然を食べる

    自然のものを自然なままに食べることが、体には一番いいのです。加工・合成品(インスタントもの)はなるべく避けて、新鮮なものをおいしく食べましょう。

  • 6

    旬を食べる

    夏野菜として代表的なものは、キュウリ、トマト、ナスなど。どれもからだを冷やす食性(涼性)をもっています。からだが熱く、ノドが乾き胃腸が弱って、食中りなどを起こしやすい、夏を乗り切るのに最適な食品をもっと活用しましょう。

  • 7

    休養も忘れず

    暑い夏は夜になっても気温が下がらず、睡眠の妨げになります。夏は昼が長く、汗をかいて体力の消耗が激しい。15~20分程度の昼寝なら夜の睡眠の妨げにならず、不足した睡眠を補ってくれます。


夏に多いからだのトラブル

梅雨には湿気(湿邪)による
トラブルに気を付けて

梅雨には梅雨独特のトラブルがあります。この時期は雨が多く、大気中の湿気が原因となり、その影響が全身各所に出てきます。最も多いとされるトラブルに頭痛があります。その他、めまいや関節症状があげられます。


夏には暑さ(暑邪)による
トラブルに気を付けて

暑い夏場に多いトラブルとしては、水分の摂り過ぎから胃腸の働きが弱り、食欲不振や下痢を起こしやすくなります。また、暑気あたりによるだるさ、疲れ、夏カゼなども多くなります。暑さのため、冷房や冷たい飲み物で冷やし過ぎになり、逆に冷えを訴える冷房病などに注意しなくてはいけません。