桂枝加黄耆湯 (けいしかおうぎとう)


【処方コンセプト】ジメジメした汗や寝汗をよくかく方の湿疹、皮膚炎に。

体が虚弱で重だるく、皮膚のしまりが悪く沢山汗をかき、そのためにあせも・湿疹ができやすい。多汗症のファーストチョイス。また、そのような状態を繰り返す方に。

桂枝加黄耆湯適応症

◆桂枝加黄耆湯は『金匱要略』の水気病篇に出ている処方で、黄汗の病とその類似病に用いられる。

・黄汗の病とは、よくわかっていないが、腎不全や黄疸のような病とみる説もある。症状としては両膝が湿気のために冷え、また腰から上に汗が出て、腰が弛痛(だるく痛み)し、皮中に何かいるような感じ(蟻走感)で、からだが重く、疼き、煩躁し、小便の出が悪くなるもの。

・また、黄汗に似た病には、歴節(関節腫痛)、夜間の盗汗(労気)、皮膚甲錯(肌荒れ)、悪瘡(できもの)、身瞤(シンジュン:筋肉がピクピク動く)などがある。

◆本方は桂枝湯の加味方。虚弱な体質で、体力・気力が衰えているが、冷え症ではないものに用いる。

◆主に、慢性病の湿疹・皮膚炎(水疱があったり、分泌物が多い、赤みがあることも)に用いる。虚証で、腹部が軟弱、あるいは胃内停水がみられる。色白で、行動も緩慢で、おとなしい方に多い。

◆虚弱者のかぜ、寝汗、多汗症、あせも、小児ストロフルス、とびひ、アトピー性皮膚炎などにも応用されている。また、潰瘍、痔瘻、床ずれなどで肉芽の発生が悪いものにもよい。

【処方構成】6味

本方は桂枝湯に黄耆(オウギ)を加えたものである。桂枝湯より一層、表虚(体表の気が不足)の状態が進んだものである。黄耆は「瘡家(皮膚の化膿や潰瘍)の要薬」と言われ、表の虚を改善して、皮膚のしまりをよくし、水気を去り、膿を排し、肉芽の発生をよくし、強壮に働く。また、桂皮と甘草の組み合わせは気の上衝(のぼせ)に効果がある。

桂枝加黄耆湯生薬構成
  解表 補気 利水 理気 駆瘀血 配合生薬数
柴胡 升麻 桂皮 防風 生姜 甘草 大棗 黄耆 人参 茯苓 防已 白朮 陳皮 当帰 芍薬 地黄 川芎
桂枝加黄耆湯                       6
防已黄耆湯                       6
玉屏風散                             3
補中益気湯               10
十全大補湯               10

 

処方名 類方鑑別
桂枝加黄耆湯 虚弱体質で肌のしまりが悪く、ジメジメした汗や寝汗をよくかく方に。
防已黄耆湯 汗かきで、からだやヒザがむくみやすく、体が重だるい方に。水太りにも。
玉屏風散 免疫力が低下し、風邪をひきやすく、疲れやすくて汗をよくかく方に。
補中益気湯 疲れやすくて、手足がだるく、食欲がない方に。夏バテ、夏やせ、寝汗にも。
十全大補湯 疲れるとすぐに横になりたがり、気力も栄養も落ち、皮膚の栄養も充分でない方に。

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