桂枝芍薬知母湯 (けいししゃくやくちもとう)



【処方コンセプト】手足の運動機能が衰えた方の関節のはれ、変形による痛みに。

手足の関節に慢性的な痛みがあり、筋肉がやせて関節だけが木のコブのようにはれて変形しているものに用いられる。一般に、体がやせて、皮膚がカサカサ乾燥している高齢者に多い。また、関節リウマチや変形性膝関節症などの病気を長く患っておられる方の急性増悪期にも応用されている。

辛夷清肺湯適応症

◆寒湿痺(寒さや湿気で起きる関節、筋肉、骨などの異常)の状態で、局所の熱痛(炎症) が明らかなものに用いられる。ただし、全身的には熱証はみられないのが特徴である。関節炎、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症、神経痛、片麻痺などに応用される。

◆本方の体型的な特徴として、身体尩羸(オウルイ)と古典(金匱要略)にあるが、単にからだが痩せて衰えているだけではなく、膝が鶴膝風(鶴の脚のように膝関節が腫れ、疼痛がある。その上下の筋肉はやせている)であることもあらわしている。「尩」は脚の曲がったようすの意もある。

◆関節炎症状が強く、桂枝加朮附湯では少し力が足りないと感じる時、桂枝芍薬知母湯(麻黄配合)がよい。本方を服用して、吐き気や食欲不振の訴えが出る方(麻黄が合わない)には、桂枝加朮附湯を使う。

◆桂枝芍薬知母湯を用いるべき証として、『新古方薬嚢』に「手足の関節が痛み、足が腫れて脱けそうに重く、頭がふらふらして息が早く、胸中むかむかとして嘔き気を催す者」とある。

【処方構成】9味

本方は桂枝加朮附湯から大棗(タイソウ)を去り、麻黄(マオウ)、防風(ボウフウ)、知母(チモ)を加えたもの。桂枝加朮附湯は表の寒証、水毒が主たる病態であり、本方にもこの病態があり、さらに辛温の解表薬の麻黄、防風が加えられているため、さらにこの働きが強調されている。また、清熱の知母が配合されているので、局所的熱感、炎症があるものに適する。本方の方意は寒証を主としているが、熱証も混在しているものである。

生薬構成
解表 補気 利水 清熱 理気 補血 活血 配合生薬数
細辛 桂皮 防風 麻黄 白芷 和羌活 威霊仙 桑寄生 唐独活 秦艽 生姜 黄耆 甘草 大棗 杜仲 附子 党参 白朮 茯苓 蒼朮 防已 知母 竜胆 陳皮 半夏 桔梗 枳殻 厚朴 地黄 芍薬 当帰 桃仁 川芎 牛膝
桂枝芍薬知母湯 9
独活寄生丸 16
疎経活血湯 17
五積散 18
防已黄耆湯 6
処方名 類方鑑別
桂枝芍薬知母湯 手足の運動機能が衰えた方の関節のはれ、変形による痛みに。
独活寄生丸 体が虚弱で、腰や手足の痛みが頑固で治りにくい方に。
加齢による腰や手足の痛みに。
疎経活血湯 痛みが強く、冷えたり疲れたりすると悪化する方の腰痛、神経痛に。
五積散 手足が冷えて、からだが重だるい方の腰痛、関節痛に。
防已黄耆湯 汗かきで、水太りタイプ。からだやヒザが重だるい方に。


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