石膏

 鉱物生薬は栽培も飼育もできないので使えば減る一方であるが、石膏は中国のほとんど全土に産出し、日本にも産出する資源の豊富な鉱物生薬である。ほぼ純粋の硫酸カルシウムの結晶塊で、結晶の形状により硬石膏と軟石膏に区別される。硬石膏を形状によって石膏、長石、方解石、寒水石などと区別していたのだが、西洋鉱物学にあてはめた時に混乱し、長石、方解石、寒水石ともに本草書のものとは別のものになった。

[石膏]

石膏

石膏。

繊維状の結晶構造が見える

石膏を破砕したもの

石膏を破砕したもの

 繊維状石膏、理石などとも呼ばれる軟石膏は含水硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)で、砕けやすく、水には42℃で最もよく溶けるが、水100mlに0.21gしか溶けない。石灰岩が温泉など硫酸を含む水で溶かされ、より溶けにくい硫酸カルシウムがゆっくりと細い針のような結晶として生長してくる。硬石膏が水和して溶け、再び結晶化して繊維状になる場合もある。

 現在用いられるものは繊維状石膏で、絹糸様の光沢を持つ結晶が束になり、厚さ5〜10センチほどの層になった板状の構造を持っている。中国で四神の一つ白虎に当てはめられたのはこの層理と虎の毛並みが似ていたからであろう。

 石膏は清熱瀉火薬の代表的なものである。急性の熱病、温熱病は「火」あるいは「熱」が体外から侵入して起こす病である。温熱病の病態は多く治療法もさまざまで、石膏は気分証の実熱を治療するものとする。

 気分証は高熱、悪熱、口渇、濃い尿、発汗などがあり、体力はまだ消耗していない段階で、便秘などの裏熱証を伴うこともある。硫酸カルシウムは水に溶けにくい化合物であるが共存する生薬によって溶解する率が大きく変動する可能性は充分予想できる。

【薬効と漢方処方】

 石膏の配合される漢方薬はいずれものどの渇き、煩渇を特徴とするが、応用範囲は広く、典型的な温病、日射病や熱射病に用いるものは白虎湯、糖尿が加わるものには白虎加人参湯が挙げられる。動脈硬化、高血圧に関連するものも釣藤散、続命湯、防風通聖散など。気管に関連するものは多く、辛夷清肺湯が副鼻腔炎、肥厚性鼻炎に、鼻水が多いのにのどの渇きもひどい場合には小青竜湯加石膏が使われる。のどが渇いてひりひりするような扁桃炎、扁桃周囲炎には駆風解毒散、小柴胡湯加桔梗石膏などが使われる。さらに気管支喘息、肺炎、肺気腫に使われるものとして麻杏甘石湯、竹葉石膏湯、大青竜湯、五虎湯、木防已湯など、腎炎などの浮腫にも使われ、越婢湯、越婢加朮湯、大青竜湯などがこれに当る。分泌物の多いかゆみ、じんましんなどに消風散が使われる。

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