木香

 ネパールやインドではお寺で使うローソクには木香が加えられ、独特のにおいを放っている。これが原因かどうか、木香の基原植物インドモッコウAucklandia lappa Decne.(=Saussurea lappa Clark.:キク科)はネパールやインドで絶滅が危惧され、ワシントン条約で国際取引が制限される植物になってしまった。

 もともと中国にはなかったものであり、古代の本草書に記載されている木香の基原は明らかではない。日本の正倉院に残る木香がインドモッコウであることは確認されていて、少なくとも唐代の木香は現代の木香と同じものと言うことが出来る。

[木香]

インドモッコウの幼苗

インドモッコウの幼苗

[雲南省鶴慶県にて。5月]

木香(雲木香)

木香(雲木香)

 このインドモッコウ、相当に古い時代に雲南に持ち込まれ、大理のあたりで栽培されるようになった。その道筋はビルマを経由したものか、チベットのラッサからヒマラヤ山脈の北側を流れ下るプラマプートラ河のルートを経由したものか、今となっては分からない。

 とにかく雲南の雲の字をかぶせた「雲木香」は本物の木香の代名詞になっている。現在では甘粛や四川、チベットなどの高地で広く栽培されいずれも雲木香と呼ばれている。四川西部、雲南西北部の高地には類似の植物が多いようで、「新編中薬志」(2002)によると、越西木香、木里木香など木香の代用品にされるキク科Vladimiria 属の植物が7種挙げられている。四川産の「川木香」はV.souliei を主とするもので、基原は数種あると考えられている。

 太い根はそのままでも強い香りを放っているが、水蒸気蒸留によって取れる精油が7%に及ぶこともあり、アラントラクトンやサウスレアラクトンなど多数のセスキテルペン化合物が含まれている。

 動物実験では腸運動の促進、抗潰瘍作用が認められている。このほか抗菌作用、抗真菌作用、駆虫作用なども認められている。精油成分には心臓抑制と血管拡張によると見られる血圧降下作用がある。

【薬効と漢方処方】

 木香は神農本草経上品に記載されるもので、現代では理気薬に分類され、気を巡行させるものとし、脾胃気滞による消化器系の機能が失調した上腹部の脹り、苦満、疼痛、吐き気、嘔吐、しゃっくり、さらに下痢、便秘などにも使われる。

 配合される漢方薬方として、香砂養胃湯、銭氏白朮散、帰脾湯、加味帰脾湯、丁香柿蒂湯、烏苓通気散、女神散、牛膝散、芎帰調血飲第一加減、九味檳榔湯、実脾飲、分消湯、参蘇飲、椒梅湯などがある。

▲ このページのトップへ