麻黄

漢方医学が抹殺されようとしていた明治18年、日本薬学会の創設者長井長義によって麻黄から有効成分エフェドリンが発見され、化学構造が決められた。この発見は後の漢方近代化、復興さらに天然物化学発展に貢献する大きな礎石となった。

砂 漠 の 草

マオウ科の植物は本来樹木の多い裸子植物に属しているが、野生状態では樹木の生育が困難な岩の上や砂漠に生育する植物で、水分の蒸発を防ぐため、表面積の広い葉は退化して鱗片状になり、茎の節をとり囲んで鱗片状になっている。太陽の光と二酸化炭素を使って糖分を作る同化作用は、本来葉の表面にあるはずの気孔や柵状組織が茎の表面に発達して、新しい草本性の茎が葉の役割をする風変わりな植物である。表面がコルク皮に変わってしまった木本性の茎になるとそれが失われ、普通の植物とあまり変わらない。草本性の茎では水分が逃げるのをくい止めるもう一つの仕掛けとして、表皮の外面にクチクラと呼ぶ硬い脂肪性の層が厚くべったりとつき、さらに発達して瘤状のクチクラ瘤ができ、少し倍率の大きいルーペで見るとガラスビーズが縦に並んだように見える種類もある。
とにかく、この類の植物は肉眼で見える著しい特徴が少なく、顕微鏡を使って内部形態的な特徴から植物を区別するしか方法がない。切り刻んだ生薬になったものを区別するのは顕微鏡を使い馴れた人にとっては簡単であるが、肉眼的にはなかなか困難である。

Episodical Pharmacognosy in Kampo Medicine フタマタマオウの雄花

フタマタマオウの雄花。日本での栽培がしやすい。

シナマオウ

中国内蒙古産の束麻黄。基原はシナマオウ

炙麻黄

炙麻黄.蜂蜜で蜜炙してある。

斉・束・山・散

日本には麻黄の生産はなく中国からの輸入に頼っていたが、現在天然資源の保護を理由として中国は輸出を制限している。以前輸入のあったモンゴル、ロシア、パキスタンなどから輸入の可能性を探っている状態のようだが、需要量はそれほど多いわけでもなく、日本国内でも栽培は可能である。塩分やアルカリ土壌を好む植物なので海岸や離島などの農業に適していない土地を利用できるのではないだろうか。
日本薬局方でも基原植物をシナマオウ、Ephedra sinica(マオウ科)の地上茎としている。中国ではシナマオウ(中)華麻黄を主とし、キダチマオウE. equisetina(中)木賊麻黄、E. intermedia(中)中麻黄をこれに加え、E. gerardiana(中)矮麻黄、E. likiangensis(中)麗江麻黄、E. przewalskii(中)膜果麻黄、フタマタマオウE. distachya(中)双穂麻黄、の四種も地域的に使われることがあると記載している。
中国ではフタマタマオウとシナマオウを同一種と見なしていて、日本薬局方も第13改訂第2追補版からこれに追随してフタマタマオウの名を消してしまったが、これまで輸入されてきた麻黄の大半はフタマタマオウである。
基原植物にはあまり関係なく、きれいに砲弾型に束ねられ赤いひもでしばったものを束麻黄または斉麻黄といい、屈曲や枝分かれの多いばらばらのものを散麻黄と呼ぶ。エフェドリンに揮発性があるためか、両者を比較すると束麻黄の方がエフェドリンを多く含んでいる。麻黄の成分はアドレナリン様の作用が強いエフェドリンだけが目だっているが、抗炎症作用のあるプソイドエフェドリン、さらにタンニンの作用も考慮されるべきであろう。炙麻黄というのは蜂蜜とともに炒った麻黄で、老人にはこのほうがよいという。多分エフェドリンは極端に少なくなっているであろう。
傷寒論に出て来る去節麻黄については、諸説あるようだが、何をもって「去節」というのかということすらまだ解決されていない。茎の節は取り去るにしてはあまりにも小さいのである。

【薬効と漢方処方】

漢方では、発汗作用、鎮咳作用、利尿作用などの薬効を認め、発熱、頭痛、鼻閉、咳嗽、喘息、浮腫、尿量減少、麻痺、しびれなどの症状に用いる。
葛根湯(かっこんとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、苡仁湯(よくいにんとう)等の漢方処方に配合される。

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