莪朮 (がじゅつ)

ウコン、ガジュツなどが含まれるクルクマ属の植物は植物学的には大変厄介なグループである。この属の植物は長い進化の歴史の間に種子を作らず、根茎の株分かれによってのみ増殖するというなまけた性質を獲得してしまった。極端な話、一個体しかない親から永遠に増え続けているクローン植物であり、永久に一種は一個体である。環境によるちょっとした形質の変動はそのまま保存されてしまって、類似のものがいくらでも存在することになる。

屋久島産
ガジュツ
Curcuma zedoaria Rosc.
(ショウガ科、屋久島産)
タイ産
ガジュツ
Curcuma aeruginosa Roxb.
(タイ産)
和独活
生の根茎の切り口。
左:屋久島産ガジュツ、右:タイ産ガジュツ

インドが原産地と考えられているガジュツの分布の北限は日本の屋久島である。屋久島のガジュツは平安時代から江戸時代にかけて薩摩藩が専売のようにして、本土向けに出荷していた記録があり、台湾や中国にも同じと言えるものがなく、屋久島固有のものと考える方が順当である。昔、滞在したタイのガジュツには切り口が青紫色のもの、青緑色のもののなどいろいろある。青紫色のものがCurcuma zedoaria 、青緑色のものがCurcuma aeruginosaと単純に理解していたが、ことはそれほど簡単ではないらしい。

植物学の原報には C. zedoaria の切り口は白、 C. aeruginosaの切り口は緑青のような緑色と記載されている。中華本草によると、中国ではガジュツの原植物が蓬莪朮C. aeruginosa、広西莪朮C. kwangsiensis、温欝金C. wenyujinの3種になっている。冬になると、これらの植物の根の先がサツマイモのように肥ってくるが、中国ではこれを郁金(欝金)という。日本で言うウコンの根茎は中国では姜黄であり欝金ではない。

いろいろなガジュツの共通する特徴としては、葉の中央付近に赤紫色の斑点がはいり、これはタイも中国も屋久島も変わらない。根茎から直接出て茎のように見える葉柄の下部が暗赤色になるが、屋久島のものは根元まで草色のままである。

屋久島のガジュツは根茎の切り口は紫色で、疑問視されながらもCurcuma zedoariaという学名を使っている。

【多彩な成分、薬効】

ガジュツの成分として発見された成分はクルクミン類が12種、モノテルペン、セスキテルペンが合わせて100種以上にもなっている。量的にはクルクミンの類はごくわずかしか含まれず、セスキテルペン類が主成分になる。中国産のガジュツにはデヒドロクルディオン、ゲルマクロン、フラノゲルメノンが多く、台湾産のガジュツにはクルクメノール、クルゼレノン、フラノディエノン、屋久島産のガジュツはクルクメノールがやや少ないが、これらの成分をすべて多量に含んでいて、しかもそれらの総量である精油含量も1.13%で、中国、台湾の2倍以上という数値を示している。屋久島産のガジュツの精油は鮮やかな紫色を呈しているが、その色の本体はアズレン類で、紫色のリンデラズレンと青色のカマズレンである。

ガジュツは家庭薬として胃腸薬に配合されているが、漢方で使われることはほとんどない。薬効は腹痛をはじめ、便秘、下痢のいずれにも効果があり、酒毒、肝臓病、胃がんに効いたという報告もあり、最近ではアニサキスに対する駆虫効果、ピロリ菌の除菌効果なども明らかにされている。最近の中国の文献によると民間薬的に使われる制がん生薬でトップに書かれていることが多い。動物実験では総エキスで著しい胆汁分泌促進作用が認められ、小腸内輸送能は減少、胃液分泌は抑制、胃潰瘍形成の抑制、エールリッヒ腹水がん抑制などが認められている。成分ではフラノゲルメノンに実験的肝障害改善の効果が認められる。

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