阿膠

 自動車その他の発展と反比例して減ったのは牛や馬、ロバなどの家畜である。中でもロバはほとんど見られなくなってしまった。

 ロバ Equus asinus L.(ウマ科)は、世界的にも人との関わりが深い家畜である。中国で薬用動物としての利用が発達したのは当然かもしれない。驢肉、驢毛、驢骨、驢脂、驢頭、驢陰茎、驢乳、驢蹄それに阿膠と余すところ無く使われてきている。

[阿膠]

山東省産の阿膠と阿膠珠

山東省産の阿膠と阿膠珠(右)

ロバと馬

ロバ(右)と馬(左)。八達嶺の長城付近の石切り

 阿膠は中国全土に生産があるようだが、現在も圧倒的に著名な産地は山東省済南から南西120キロの東平県である。ここから黄河の対岸、東阿が古代から阿膠の産地として記載されてきた土地である。

 ロバの皮を水に漬けて2〜3日、毛を去り、さらに2〜5日水に浸す。鍋に入れて3昼夜水から煮て、液汁を取り出す。同じ操作を5〜6回繰り返す。煮だし汁に明礬を少量加えて静置、夾雑物を沈でんさせる。この上澄みを取って弱火で煮詰め、黄酒と氷砂糖を加え、さらに煮詰めて型に入れて固める。固まったものを直方体に切り、陰干しにしたものが阿膠である。

 この過程で、東平県にある阿井という井戸の水を使うと良質の膠になるという謂われから阿膠の名が付いたと言う。叩けば簡単に砕け、砕いたものもそのまま使えるが、動物の皮なので匂いも味も悪臭であり悪味である。

 硬い阿膠を定温乾燥器で60℃に加熱し、包丁で5ミリぐらいの立方体に切り揃えて準備。オキシジミという貝の殻を粉にしたという海蛤粉を鍋で予熱、サラサラになったところで刻んだ阿膠を投入、よく攪拌するとアラレのように膨らんでくる。焦げないうちに篩で蛤粉を落として「阿膠珠(玉阿膠)」の出来上がりである。食べてみると焼きたてのエビせんべいの味である。止血作用が強くなるということである。

【薬効と漢方処方】

 血虚のものに補血薬あるいは弱い止血薬として使うもので、芎帰膠艾湯や温経湯、黄連阿膠湯などに配合されるのがこの使い方と思われるが、杏蘇散、炙甘草湯、猪苓湯などというあまり関係のなさそうな薬方にも配合されている。血熱を冷やし、滋陰、潤燥の働きを利用したものであろう。矢数道明氏は猪苓湯の主役は猪苓と阿膠であると書いておられる。

 成分はいわゆる硬たんぱく、コラーゲンである。コラーゲンは水と加熱すると、一部分解してゼラチンになる。たんぱく質分解酵素でコラーゲンは分解されにくいが、ゼラチンは分解される。阿膠はコラーゲンとゼラチンの混合物である。これ以外の阿膠独特といえる成分はまだ明らかではない。

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