続命湯(ぞくめいとう)

階段の上りの息切れ

ストレスの多い昨今、肥満や飽食も手伝って高血圧、動脈硬化などの血管障害を引き起こす生活習慣病が増えてきました。中でも、脳卒中は救命治療の進歩で、亡くなる人は以前よりも少なくなったものの、患者数は依然減っていません。ある調査でも、助かった患者の90%以上が、退院のあと後遺症で苦しんでおられるというデータもあります。その後遺症を改善して、日常生活が元通りにできるよう回復させる漢方薬が続命湯(ぞくめいとう)です。まさに「命(日常生活)が続けられる」という願いを込めて命名された漢方処方のひとつです。

 

7世紀の前後に渡っていた飛鳥時代は、奈良県の明日香村(飛鳥)に都が置かれていた時代です。2002年4月、その「飛鳥京庭園跡」から続命湯(ぞくめいとう)の処方が書かれた木簡が出土し、「日本最古の処方箋」として話題になりました。これは7世紀後半の頃のものと見られており、時代としては、中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿を暗殺した「大化の改新」(645年)の頃ということができるでしょうか。そのような古い時代から、脳卒中という病気があったわけです。

 

続命湯は9種類の薬草からできています。その働きは3つのグループに大きくわけられます。主薬の当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、桂皮(けいひ)で頭や手足をはじめ全身の血液循環をよくして、しびれや麻痺を改善させます。麻黄(まおう)、石膏(せっこう)、杏仁(きょうにん)では、利水の働きにより浮腫・はれを取り除き、主薬の循環作用を助けます。また、人参、甘草、生姜により消化吸収に努め、全身の運動機能を回復します。高脂血症などの生活習慣病をお持ちの方は、脳の血液の流れも滞りやすくなり、それに伴ってめまい、耳鳴りや頭痛、肩こりなどの症状が現れてきます。続命湯は脳の血流を良くすることによって、このような症状を改善していきます。脳以外の場所でも血行が悪くなると、関節痛や神経痛の原因にもなりますが、血の流れをよくする続命湯はそのような場合にも使用することができます。

寿命のある限り、いつまでも健やかであり続けたい

近年、暮らしは次第に便利になり食生活にも変化が生じた結果、増えているのが生活習慣病です。かつては成人病とも呼ばれていた生活習慣病には、糖尿病、脳卒中、心臓病、高脂血症、高血圧、肥満などの疾患が挙げられます。結核や呼吸器疾患が上位を占めていた日本人の死因も、この50年ほどで大きく様変わりし、1998年の調査では、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が上位となっており、多くの人が生活習慣病によって死に至っているということがうかがえます。 脳卒中は、ドロドロの血の塊が脳の血管を詰まらせる脳梗塞と、もろくなった脳血管が破れて出血する脳出血に分けられます。脳血管疾患は、高血圧や高脂血症などの基礎疾患があると発症のリスクが高まり、病後には手足のしびれや言葉のもつれなどの障害が残ることもあるので日頃からの注意が必要です。

 

続命湯は、一般的に言葉のもつれや手足のしびれなどを伴う、めまい、耳鳴り、頭痛などや、関節痛や神経痛にも応用される漢方薬で、中国の古典である「金匱要略(きんきようりゃく)」という本に収載されています。

金匱要略には「中風(ちゅうふう:脳卒中など)、痱(ひ:麻痺など)にて身体自ら収むることを能わず、口言う能わず、冒昧(ぼうまい:はっきりしないこと)にして痛むところを知らず、或は拘急(こうきゅう:手足のひきつれ)して転側(寝返り)するを得ざるを治す」とあります。この文章は、「脳卒中などで麻痺が起こり、自分で体を動かすことも、しゃべることも出来ず、どこが痛いのかもはっきり分からず、手足が引きつれて寝返りもうてないような人を治す薬です」というような意味になり、古くから脳卒中などの後遺症に使用されていたことがよく分かります。

どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか

脳卒中などの脳血管疾患を予防するには、高血圧や高脂血症などをコントロールすることが大切です。そのためにはやはり、高脂血症の方は、肉類や油分を取り過ぎて太らない。高血圧の方は塩分を取り過ぎない。また、味付けは薄味を心掛ける。味を濃くすると塩分も砂糖も増えるからです。中高年になれば、若いときのようにエネルギーを必要としないので、伝統的な日本食を見直して、根菜類(海草類もよい)や魚中心のバランスのとれた食生活をすることです。適量のお酒は血管によいといいますが、少量でがまんできない方やタバコも血管に悪影響します。控えめにするのが望ましいでしょう。また精神面では、いつもイライラして怒りっぽい、興奮しやすくのぼせ症、仕事のことばかり考えて熟睡できないなどのタイプが多いといわれています。どちらかというとまじめ人間、リラックスできない方です。余裕を持って事に当たり、仕事のことを忘れてたまには好きなこと(趣味)を楽しみましょう。

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