乙字湯(おつじとう)

トイレ

乙字湯は日本で生まれた漢方薬です。江戸時代の医師、原南陽(はらなんよう)によってつくられました。乙字湯の「乙」は甲・乙・丙の乙で、乙字湯のほかに、甲字湯(こうじとう)や丙字湯(へいじとう)などの処方もつくられています。甲字湯や丙字湯は痔の漢方薬ではありませんが、乙字湯は痔に使用されることがほとんどです。

 

乙字湯は柴胡(さいこ)、黄ゴン(おうごん)、当帰(とうき)、升麻(しょうま)、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)の6種類の生薬から構成されています。痔は、肛門周辺の血流が悪くなってうっ血が起こり、また痔核や緩んだ上皮などが垂れ下がって肛門から脱出する疾患です。乙字湯に含まれるこれらの生薬には、痔の原因となる血流のうっ滞を改善し、垂れ下がり脱出した痔核や上皮を引き締めて引き上げる作用などがあり、痔に効果を発揮するのです。

 

また、痔の発生や悪化の原因には、固い便を排出する際の力の入れ過ぎもあります。乙字湯に含まれる大黄は下剤成分で、便を軟らかくして力の入れすぎを予防し、また便が通過する時の肛門への負担を軽くすることができます。(下痢が起こる可能性もありますので、妊婦の方は注意してください)

 

痔を始めとする下半身の悩みは人には言いづらいものです。最近ではどこも事務処理にパソコンが導入されており、同じ姿勢でのデスクワークが続くことが多く、痔でお悩みの方が増加しています。オフィスでは足元も冷えやすいことから、女性の方にも痔が広がっているようです。痔の薬としては、坐薬や注入軟膏などの外用薬が一般的ですが、漢方薬ではこのような内服薬がよく使われています。(漢方の痔の外用薬としては、紫雲膏という紫色の軟膏があります)

痔の痛みと出血

痔はイボ痔とキレ痔の2つに大別することができます。その名のとおり、イボ痔はイボのような突起が出る痔、キレ痔「裂肛(れっこう)」は肛門の奥が切れる痔です。イボ痔は正式には「痔核(じかく)」と呼ばれ、肛門の内側にできるものを「内痔核(ないじかく)」、肛門の外にできるものを「外痔核(がいじかく)」と言います。内痔核が大きくなって肛門の外に脱出してしまったものを「脱肛(だっこう)」と言います。

 

中でも痔核は、肛門の静脈の血流がうっ滞し、流れの悪くなった血などがたまってイボのように出てくることから起こります。痔核とは、肛門の静脈瘤なのです。排便時に力を入れ過ぎることや冷えなどが原因となります。排便時に、激しい痛みや出血を伴うこともあり、特に外痔核には痛みが激しいという特徴があります。内痔核が大きくなり、肛門周辺の粘膜にたるみが出ると、肛門から痔核が脱出してきます。排便時に脱出しやすくなりますが、自然に中におさまる場合、手で入れるとおさまる場合、常に脱出している場合などがあります。

 

歯状線(肛門と直腸の境界線)より奥の直腸には知覚神経がきていないため、ここにできる内痔核などはあまり痛みを感じませんが、直腸表面は粘膜でおおわれているだけでもろく、出血しやすい。一方、歯状線の手前、肛門には痛みを感じる知覚神経がきているため、この部分にできる裂肛や外痔核などのほとんどは強い痛みを伴うが、表面は皮膚に似た肛門上皮でおおわれているため、丈夫で出血しにくい。

 

痔の治療薬としては軟膏や坐薬など、肛門に直接使用するものが一般的に広く使用されています。軟膏は肛門の周りに塗布したり、中に注入したりして使用します。軟膏も坐薬も主に消炎を目的とした成分から構成されています。痔も悪化すると切除などが必要となり、特に痔核が肛門外に脱出して押し込んでも戻らないような場合などは手術の適用となります。

どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか

痔の原因となる肛門周辺の血流悪化は同じ姿勢をとり続けることや冷えなどによって起こります。寒い冬に痔が悪化しやすいのは、冷えによって血液のうっ滞が起こるためです。職場などではエアコンが効いていても足元だけ冷えるということがよくありますので、ひざかけや座布団などを使用して、下半身が冷えないように注意するようにしましょう。靴用カイロなどを用いて足の冷えを予防するのも効果的です。

 

また、固い便を無理に排出することで痔が発生したり悪化したりすることもあります。便秘が続くと便も固くなりがちとなりますので、便通を確保できるように食生活に注意したり、場合によっては便秘薬を使用して固くなる前に排出しておく必要があるかもしれません。

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