麦門冬湯(ばくもんどうとう)

喘息

刻々と変化する日本の四季。秋から冬は空気が乾燥する季節になります。秋に起こりやすい症状は咳(せき)。空気の乾燥はノドや気道が乾燥する原因のひとつとなり、日ごろ健康な人でもこの時期は咳が出やすくなります。また、秋から冬は喘息が悪化しやすい季節でもあります。

 

麦門冬湯は金匱要略(きんきようりゃく)という漢方の古典で紹介されている漢方薬です。主薬(メインとなる生薬)が麦門冬(ばくもんどう)であることから、麦門冬湯と名付けられました。庭や道端で見られるジャノヒゲという植物の根から得られる生薬が麦門冬で、せき止め、痰きりなどの作用のほかに、体内に潤いを与える効果もあります。

 

麦門冬湯には、主薬である麦門冬ほか、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)、人参(にんじん)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)の全部で6種類の生薬が含まれています。麦門冬と半夏は、主にせき止め、去痰に働き、麦門冬、粳米、人参は乾いた体に潤いを持たせる効果があります。人参、大棗、甘草には体に元気をつけていく効果もあります。つまり麦門冬湯は、咳などの原因となる体内の潤い不足を補いながら咳を止め、弱った体に元気をつけていくような漢方薬ということができるのです。

歳を重ねるほどノドが乾いて咳が出る

カゼの症状としても出やすい咳ですが、煙草の吸いすぎや体の弱り、体内の乾燥などさまざまな原因があります。このような場合に使用される漢方薬が麦門冬湯です。空気が乾燥すると、ノドや気道も乾燥しやすくなります。また、発熱消耗性疾患(カゼによる発熱など)や長患いで体内を潤す水分が減った時にも口、ノド、気道などに乾燥が起こります。

 

ノドや気道は粘膜です。常に粘液を分泌し、その潤いで表面を守っています。空気の乾燥によって水分を奪われた場合や、体の水分不足で充分な粘液を分泌できないと、粘膜の表面はカラカラに乾いてきます。乾燥した状態では粘膜を守ることができません。つまり、粘膜は少しの刺激でダメージを負いやすくなってしまい、ちょっとしたことで咳や痛みが発生するようになります。また、分泌された粘液は痰の材料にもなります。そのため、乾燥が起こっているときの痰はかさが少なく、その分粘り気が出るため流れが悪くなり、ノドにはりついて排出しにくくなります。このような場合は乾燥と同時に炎症が起きていることも多く、痰の色が濃い黄色などに着色することもあります。はりついた痰を排出することができず、ゴホゴホとこみ上げるように咳き込み、苦しくて顔が真っ赤になる人もいるようです。痰が切れにくく咳が出るという、ノドや気道の乾燥によって起こる症状を改善する漢方薬が麦門冬湯です。

 

麦門冬湯は潤いを補うせき止め薬ですので、空気が乾燥する季節の咳、体内(特にノドや気道)の乾燥による咳に使用されます。体に元気をつける作用もあるので、虚弱者や高齢者、病後で体力が落ちている方の咳にも適しています。特に高齢者には、気道が乾燥することによって起こる空咳が止まらずお困りの方が多くおられます。加齢とともに気道などの粘膜の潤いが低下して咳が発生しやすくなるからです。高齢者の空咳にも麦門冬湯がよく使用されています。

最近では煙草の吸いすぎによるセキや、降圧剤の副作用による空咳にも使用されることがあるようです。

どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか

空気が乾燥している季節はマスクなどを使用して、乾燥した空気がノドを直撃しないように注意することです。マスクを使用すると、呼気に含まれる蒸気で適度な湿度を保つこともできます。また、ノドや気道が乾燥している時は刺激に敏感になっているため、小さなホコリや冷たい空気などでも咳が出やすい状態になっています。マスクで咳の原因となる刺激物をある程度は遮断することもできます。辛い食事なども粘膜への刺激となりやすいので避けたほうがよいでしょう。

 

また、咳はカゼの代表的な症状のひとつです。カゼをこじらせると咳だけがとれず長引いてしまうことがよくあります。カゼをひいた時には葛根湯などの服用と共に体をゆっくり休ませて、早い段階で治すようにしましょう。

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