柴葛解肌湯 (さいかつげきとう)


【処方コンセプト】高熱や激しい症状が全身に及ぶ風邪に。

柴葛解肌湯は、インフルエンザなどの急性疾患によく使用されている処方である。風邪のひき始めは、悪寒、発熱、頭痛など(漢方では表証という)が主な症状であるが、それがさらに体の奥(半表半裏や裏)へ進行し、全身に波及し激しさを増した時に用いる。

柴葛解肌湯適応症



◆原典の『勿誤薬室方函口訣』には「太陽、少陽の合病、頭痛、鼻乾、口渇、不眠、四肢煩疼、脈洪数なる者を治す」とある。    
※合病:傷寒の六経病証で、2つの経または3つの経が同時に発病すること。


◆柴葛解肌湯は太陽病に使う葛根湯と少陽病に使う小柴胡湯に清熱の桔梗石膏を合わせたような処方。 したがって使用目標は、葛根湯の悪寒、頭痛、身体痛、発熱、無汗などと、小柴胡湯の口が苦い、 胸脇部の張り、食欲不振、悪心、嘔吐などの症状があって、さらに熱症状が強いものを目標とする。


◆急性熱性疾患で熱症状が強く、高熱を出し、症状が激しい場合は、柴葛解肌湯をファーストチョイスで 考えるとよい。他には、発熱を伴わない頭痛、肩こり、眼痛などのほか、興奮しやすい、 不眠などの精神症状などにも応用することができる。


◆インフルエンザウイルスのような強力な邪は、体表だけでなく一気に体の奥にまで侵入し、体表、 体内の両方に悪影響をおよぼす場合がある(太陽病と少陽病の合病)。このような場合、 速やかに体表と体内の邪を追い払わなければならない。このような時に葛根湯と小柴胡湯を合わせた方意を持つ柴葛解肌湯がよい。

※スペイン風邪が流行した際、浅田宗伯先生の弟子である木村博昭先生は初期から高熱を出すものに、柴葛解肌湯などの処方を証に合わせて使用し、1人も死者を出さなかったという逸話がある。


漢方によるかぜ治療の基本は、病位(病気の時期)により処方を使い分けることである。

 ●表証(太陽病)には、葛根湯や麻黄湯(虚証には桂枝湯、参蘇飲)などの桂枝剤や桂麻剤。
 ●半表半裏証(少陽病)には、小柴胡湯や柴胡桂枝湯などの柴胡剤。
 ●裏証(陽明病)には、白虎加人参湯などの石膏剤。

インフルエンザのような強力なウイルスに感染すると、発病初期から太陽病期にとどまらず少陽病期にまたがることが多い。
中には陽明病期まで進むこともある。症状の激しさだけでなく、その進展の早さにも、フレキシブルに対応できるのが柴葛解肌湯である。

【処方構成】16味

柴葛解肌湯は葛根湯と小柴胡湯を合わせ、大棗(タイソウ)と人参(ニンジン)を抜き、石膏(セッコウ)を加えた処方構成。麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、生姜(ショウキョウ)は体表部を温め、発汗解熱に働く。また、葛根(カッコン)は筋肉の痙攣を鎮め、首や肩の凝りを解きほぐす。そこに芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)が加わり葛根の働きを助ける。柴胡(サイコ)と黄芩(オウゴン)の組合せは往来寒熱を取り除き、消炎、抗ストレス作用などがある。また、半夏(ハンゲ)と生姜の組合せは吐き気を鎮める。以上の生薬に清熱作用があり、胸脇の熱証に対応する石膏を加え、表は温めて発散させ、裏は消炎するという構成になっている。

柴葛解肌湯生薬構成
解表 補気 清熱 理気 利水 化痰 止咳 配合生薬数
柴胡 麻黄 葛根 桂皮 生姜 細辛 防風 藿香 蘇葉 白芷 人参 黄耆 甘草 大棗 石膏 黄芩 前胡 芍薬 陳皮 厚朴 大腹皮 木香 枳実 白朮 茯苓 半夏 桔梗 五味子 杏仁
  柴葛解肌湯   10
麻黄湯 4
葛根湯 7
小青竜湯 8
参蘇飲 13
藿香正気散 13
玉屏風散 3
処方名 類方鑑別
柴葛解肌湯 風邪やインフルエンザの初期から後期まで幅広く対応できる。 頭痛、体の痛みやほてり、全身倦怠、口渇、食欲不振、吐き気、寒気がして汗はない。インフルエンザで高熱が出て症状が激しいものに。
麻黄湯 風邪やインフルエンザの初期(発症後半日~1日程度)に効果的。 柴葛解肌湯の適応症状に似ているが、食欲不振や吐き気などの消化器症状や口渇には効果が弱い。
葛根湯 風邪の初期(発症後半日~1日程度)に効果的。 頭痛、発熱、寒気がして汗がないもので、特に首筋のこわばりが特徴。食欲不振や吐き気などの消化器症状や口渇には効果が弱い。
小青竜湯 水のようなサラサラとした鼻水、痰や咳が多く出る風邪に。
参蘇飲 疲れやダルさを訴え、食欲もない方の風邪に。風邪の後にいつまでも咳が残るような場合にも。
藿香正気散 胃腸型の風邪に。体が重だるく、腹痛や下痢、食欲不振を目標に。
玉屏風散 免疫力が低下しているため、風邪を引きやすい方に。風邪の予防薬として。


      

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