【処方コンセプト】腰から下が冷えて重だるく、夜間排尿があるか、足がむくむ方。
八味地黄丸に牛膝と車前子を加え、下肢の浮腫やしびれを除く処方。夜間排尿、尿は無色透明、下半身のだるさ、つまずきやすいなどが特徴である。
◆ 原典の『済生方』には「腎虚して腰重く、足腫し、小便利せざるを治す」とあり、腎陽虚と水湿が合わさった状態に用いることがわかる。同じ腎陽虚の八味地黄丸の利水作用をさらに強力にしたスーパー八味地黄丸と位置づけられる。
◆ 腎陽虚では、腰から下が冷えて重だるく、腰痛、下腹部が引きつる、浮腫、尿量減少あるいは多尿、夜間排尿などの症状がみられる。牛車腎気丸は腎陽虚の症状に、さらに下半身の浮腫、乏尿(極度の尿量減少)などの水湿の症状がみられるのが特徴。
◆ 臨床では、下半身の症状(排尿異常・むくみ・痛み)、老化症状などを目標に、糖尿病性神経障害、前立腺肥大症、多発性神経炎、骨粗鬆症、腎炎(扁桃炎後や産後に出やすい)、老人性白内障、シェーグレン症候群、ED(勃起障害)などに応用されている。
◆ 牛車腎気丸の適応で、胃腸虚弱な者には、香砂六君子湯や参苓白朮散などを一緒に用いるとよい。
【処方構成】10味
八味地黄丸は、地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)の補腎益精薬で腎精不足を補い、牡丹皮(ボタンピ)、沢瀉(タクシャ)で腎の虚熱をさまし、沢瀉、茯苓(ブクリョウ)で補腎益精薬の潤し過ぎを抑えて、全体として腎精不足を補う。さらに、温陽散寒の附子(ブシ)、桂皮(ケイヒ)が血行を促進して全身を温め、特に腰から下が冷えて重だるい、腰痛など腎陽虚の症状を除く作用がある。 以上のように、八味地黄丸は腎精不足と腎陽虚の両面を補い、主として腎陽虚を補う。 牛車腎気丸はさらに、補腎利水の牛膝(ゴシツ)・車前子(シャゼンシ)が加わり下半身の浮腫、乏尿、排尿困難を改善する。
解表 | 清熱 | 利水 | 補気 | 補血 | 活血 | 温補 | 配合生薬数 | ||||||
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桂皮 | 菊花 | 牡丹皮 | 茯苓 | 沢瀉 | 車前子 | 山茱萸 | 山薬 | 地黄 | 枸杞子 | 牛膝 | 附子 | ||
牛車腎気丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||
八味地黄丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||
杞菊地黄丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||
六味丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 |