■ 第6期関西系統中医学講座の方針 ■
 
 以下の4編で構成されます。
[基]は他の編を受講する前提となりますが、他編と同時進行で進めることも可能です。それ以外の編は、特に順番はなく、目的に応じて選択していただけます。漢方薬は[薬]、疾患単位での取り組みは[病]、東洋医学的な診断や症例の病態把握は[弁]で提供します。
 全体の構成や内容は、敢えて、従来のものを踏襲してご提供します。ただし、随時、新たな見解や話題が追加されることもあります。特に生薬・処方解説編では、書籍「究めるエキス漢方大全」の発刊に伴い、記述内容や取りあげる処方に変更があり得ます。弁証・症例分析編の課題症例は、毎期新しいものになります。
 
【[基]基礎理論編】
 教科書的な中医学理論を土台に、本講座独自の視点から東洋医学理論の特徴を探りながら、その本質に迫ります。自然現象と共通する原理を基礎とする東洋医学理論の視点を生かし、異質の理論として頭ごなしに覚え込むのではなく、現代医学の知識もふまえ、誰にでも納得できる理論として理解する切り口を意識しています。基礎理論を身につけることが、東洋医学に関わる種々の現象を「覚えることから考えることへ」と転換を図る土台となります。何度でも立ち返り、学習してください。経験を経てまた見直すことで、初めて見える世界があったり、また違った世界に見えたりするものです。初めて東洋医学を学ぶ方はもとより、従来の学習で納得できない点の多かった方、臨床の経験は豊かでもなぜそうなるのかに疑問を感じる方にお奨めします。
 配付するテキストは指定図書のサマリーです。詳細な記述は書籍『標準東洋医学』を各自ご購入いただき読んでいただくことを前提としています。
 
【[薬]生薬・処方解説編】
 個々の生薬の性質や処方を既存の分類の枠組みにとらわれず、基礎理論編や弁証、病態などで展開される視点を生かした把握の仕方を試みます。
 前半は気熱血津液の視点から、後半は臓腑の視点から、該当する生薬や処方について取り上げます。
 生薬は主に、寒熱燥潤、散収昇降、帰経の特徴から分析し、個々の生薬の「顔」を印象づけます。
 処方は陰陽の視点、作用点の特徴、臓腑との対応、巡りへの介入などの視点から、寒温燥潤分析、層構造の概念図に投影しながら、各方剤の特徴と適応を分析します。書籍『究めるエキス漢方大全 「ZtoA」実践から基礎へ』の記述内容も活用しながら、医療用エキス製剤のほか、小太郎匙倶楽部の処方も取り上げます。
 
【[病]生理・病態・治療編】
 現代医学的にとらえられる種々の臓器や機能別にそれらの生理や疾患が「東洋医学の視点」からどのように映るかを、主に五臓の考え方から分析し、講師の経験を通して提供します。治療を効率よく行いまた、難病に対して新たな治療を挑むためには、生命現象や生理機能に対する理解を深め、正常な状態に対する認識を持つことが大変重要だと考えています。単なる病型分類としての治療経験の蓄積だけでなく、生理的なしくみをふまえた病態生理を考察しながら、治療法に結びつけて考えます。
 
【[弁]弁証・症例分析編】
 ①目の前の患者さんを東洋医学的にどう把握して治療に結びつけるかを学びます。弁証のノウハウを一つひとつの要素として取り出して学びます。②方剤決定のための道具に使われがちな「症候」を、弁証の判断材料として扱えるようにするために、基礎理論編で学んだ視点を活かしながらその発生機序について考えます。③実際の症例を題材に、症例分析や治療の実際を提示して、治療における考え方を紹介します。皆さんがお困りの症例を提供していただく機会も提供しています。
 
 中医学理論は完成されたものではなく、誤りや不完全さを含んだものであり、まだまだ修正・発展させなければならないものと考えています。
 本講座も、確立したものを一方的に提供する場所ではなく、未完成でも、不完全でもよいから、私が現在持てるもの全てを出すという姿勢を持ち、それをご参加の皆さん一人一人が持っているものと合体する場所にしたいと考えています。そのことで、東洋学理論の誤りやまた正当性を認識し、良いところはさらに発展させ、誤りは修正する力になれたら幸いです。