加味逍遥散(かみしょうようさん)

イライラや不安感

春は気持ちがそわそわして何とも落ち着かない時季です。卒業式、入学式を控えている方、またはその準備に大忙しのご家族の方、新社会人の方、新しい職場で働かれる方など、この季節は慌ただしい日々が続きます。特に新しい環境に移られた方はその場所、仕事、人間関係に慣れ、落ち着くまでにはそれ相応の時間がかかります。始めのうちは慣れないことばかりで何をやってもうまくはいかず、気を揉んでイライラし、周囲に当たり反感をかってしまうこともあるかもしれません。「軌道に乗れば仕事(勉強)にも集中でき、上司(先輩)や部下(後輩)との信頼関係も築けるのに‥」とお思いの方もいらっしゃることでしょう。このような状態を避けるためにもこの時季、加味逍遥散が必要となってきます。

 

漢方では「春の病は肝にあり」といわれるように肝の病気が増加します。肝は現代医学でいう肝臓をさすだけではなく、漢方では自律神経を調節する機能とも考えていました。春にイライラや憂うつ、不安感などの症状が現れたとき、まず肝が傷ついた(自律神経の失調)と考えます。よく春先に耳にする「五月病」も肝が傷ついたために起こったものです。加味逍遥散の『逍遥(しょうよう)』は、「気持ちが落ち着かず、何となくイライラして心がゆれる状態」をあらわしています。また、生理前になるとホルモンのアンバランスによって生じるイライラや不安感、気分の高揚といった女性特有の月経前緊張症にも用いられる処方でもあり、女性の保健薬としてもお使いいただけます。

 

加味逍遥散の原方は中国の古典である「和剤局方(わざいきょくほう)」に収載されている逍遥散(しょうようさん)です。これに駆瘀血(くおけつ。古く滞った血を取り除き、血液を循環させる)作用の牡丹皮(ぼたんぴ)と清熱(せいねつ。熱を冷ます)作用のある山梔子(さんしし)を加えた処方です。中国では、丹梔逍遥散(たんししょうようさん)とも呼ばれています。牡丹皮は「立てば芍薬(しゃくやく)座れば牡丹(ぼたん)歩く姿は百合(ゆり)の花」の慣用句にも表現されている、牡丹の根皮です。山梔子は果実が熟しても口を開かないといわれて名付けられたクチナシの実をさしています。

 

加味逍遥散は4つのグループからなっています。

  • ・自律神経の緊張を緩和する柴胡・薄荷のグループ
  • ・神経の興奮とのぼせをさます牡丹皮・山梔子のグループ
  • ・補血・栄養と月経の調節をする芍薬・当帰のグループ
  • ・消化吸収や利尿を高める白朮・茯苓・生姜・甘草のグループ

 

これら4つのグループが総合的に働いて気持ちを穏やかにしてくれます。

心優しい方の多彩な症状に

肝は気(エネルギー)の流れを調節しています。肝が傷つくことで気の流れは悪くなります。気の流れが悪くなりやすい方としては、精神的な緊張を伴いやすい地位や立場にある方、性格的に几帳面な方、気持ちのやさしい神経の細やかな方、心の傷つきやすい方などに生じやすいといえます。症状としては、憂うつ、不安感、イライラ、ため息がでるなどの精神神経症状や、胸脇部の張った感じや痙れん性の便秘、また自律神経機能の失調が内分泌系に影響を与えることから起こる障害、例えば乳房が張ったり、月経周期が乱れたり、月経前に異常な緊張感に見舞われるなどがあります。このような症状が現れた場合に加味逍遥散を服用すれば大変気持ちが楽になります。

どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか

結論から申し上げますと、「肝を傷つけない」ことです。肝は五行でみると木に相当します。木は上へ上へとスクスクと伸び自由に成長することを好みます。このとき何か成長を妨げられるようなことが起きると木はそれ以上伸びることが出来ず、かえってストレスを与えてしまいます。肝でも同じことが言え、伸び伸びすることを好み、周囲からの精神的なストレスを嫌います。

 

現代はストレス社会であるので全ての刺激をシャットアウトすることは難しいですが、気持ちが安らぐ場所を訪れたり、好きなこと(趣味)をしたりしてなるべくリラックスするように心掛けましょう。また、身に付ける衣服や下着もあまり身体を締め付けるものはよくありません。ゆったりした衣服を身に付け、気血のめぐりの妨げにならないようにしましょう。

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